2006年07月31日

●バーンスタイン/マーラー交響曲第8番「一千人の交響曲」



先日聴いたバーンスタインの一千人の交響曲。今度は同じメンバーが別の日にライブ録画した映像をDVDで観てみる。

映像を見て、認識を新たにしたのがソプラノのエッダ・モーザーのすばらしさ。高音域の美しさには本当に心を打たれる。それからヘルマン・プライの第二部での独唱も実にすばらしい。声質、声量ともになにも言うことはない。それから、CDではきわめて残念だったパイプオルガンの音量もこちらは十分で安心。

この録画、気がつくと1975年で、もう31年前の映像であることにあらためて驚く。そういう意味では、1975年の31年前といえば1944年でまだ戦時中だなあ、みたいな変な感興も起こってくる。バーンスタインも本当に元気で、指揮台の上で飛び跳ねていた。みんな若いわけである。

(ちなみに、エッダ・モーザーが歌う「魔笛」の音声が、ボイジャー1号、2号に積載されたレコードに収録されているらしい。)

2006年07月30日

●司馬遼太郎「功名が辻」

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今年の大河ドラマの原作。先が気になるので読んでみたのだが、これはドラマよりも滅法面白い。というより、ドラマがどれだけ原作を改鼠しているのかがわかって、逆にドラマを観ることに興ざめしてきたぐらい。描かれている織豊政権の成立から徳川政権への移行期についてのストーリーは小学校の頃から嫌と言うほどなぞり続けてきたのだが、山内一豊という人物の視点に立ってみるとまた違った趣で見えてくるから面白い。つとに小山評定における山内の挿話などは知ってはいたものの子細については知るに及ばなかったので実に興味深かい。通勤の友としては実にちょうど良い本であった。

2006年07月29日

●ハウルの動く城(2004)



やっとテレビ放映されたのでついつい見てしまう。もちろんジブリ映画をはじめて見たときの鮮烈な衝撃はないのだが、見知った街に久々に訪れたときのような懐かしさ、あるいはお気に入りの映画のお気に入りの俳優たちが全く新しい映画に登場したのを見たときの新しい感動に似た強い感興を覚えるのであった。

端々に現れる過去のジブリ映画のフラグメントが、そうした感興を引き起こす(おそらくは「ラピュタ」にその多くを負っていると思うのだけれど)。主人公が老けたり若返ったりする微妙な描写が実に上手く面白い。航空機の発達したパラレルな世界も相変わらず魅力的。

2006年07月28日

●ダン・ブラウン/「ダ・ヴィンチ・コード」

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ちまたで流行っている「ダ・ヴィンチ・コード」をようやく読むことができた。というのも、図書館で予約をしていたのだが、350番待ちという状態でなかなか入手することがかなわなかったのである。ところが、親戚から借りることができて、ようやく手に取ることができたというわけである。

こういう、隠された歴史を暴露していくという小説は、日本で言えば高橋克彦氏の一連の小説が有名だと思うのだが、それに負けず劣らず実に刺激的な小説。昨日読んだ「パリ左岸のピアノ工房」に続いてパリが舞台だった、ということもあって、実に自然に物語に入っていけて、また寝食を忘れて没頭してしまい、上中下三冊を今日一日で読み終わってしまう。ちなみに仕事はちゃんとやりましたよ。

ストーリーの展開が実に素早くのろのろしたところがない。あとで待ち受けるどんでん返しに面食らうのだが、それは物語を味わう快感であろう。

内容についてはあまり書かないのだが、最後のピラミッドの場面、ルーブルに昔行ったとき実際に見たことがあるような気がするのだが、記憶違いだろうか…。

2006年07月27日

●カーハート/パリ左岸のピアノ工房

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また寝食を忘れてしまう本を見つけてしまう。一気に一日で読み終えてしまったほど。この本ほどピアノへの愛情に満ちた本はないのではないか、と思わせるノンフィクション。パリを舞台にした著者のピアノとの再会。ピアノの歴史、構造といった学術的な話から、ピアノとの忘れがたい思い出やピアノを介して出会う人々との対話と交流。そしてピアノを弾く喜びがちりばめられたまさにピアノ賛歌とでも言うべき本。この本を読んだ音楽愛好者であれば、誰しも自らのピアノとの出会いを思い出し、ピアノから離れたことを悔恨し、ピアノとの関係をもう一度持つことができたら、と思うであろう。ピアニストにとってもピアノとの付き合い方が新しくなるかもしれない。かくいう僕もピアノと向き合った子供の頃の苦くもあり懐かしい思い出に浸り、またピアノを始めたいというかなわぬ望みをいだくのであった。

2006年07月26日

●アバド/ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」



またアバドのベートーヴェン全集を聴いてみる。演奏はベルリンフィル。

うーん、すばらしい。颯爽たる英雄。都会的で若々しい演奏。まるで青々とした草原で駿馬をかけさせているような気分になってくる。ベートーヴェンって、こんなにさわやかで良いんでしたっけ、と思ってしまう。クライバーとは違う若々しさがある。クライバーの若々しさが絢爛豪華であるとすれば、アバドのそれは青春の若々しさとでもいう感じ。そうだ、アバドのこの演奏の中には永遠の若さが宿っているといっても過言ではないだろう。

僕にとっての初のアバド体験は、プロコフィエフのピアノ協奏曲第三番を振った演奏で、あの若々しく覇気のある演奏に感動したものである。そんなアバドも気づいてみるともう73歳。若いと思っていたアバドももう70代か、と感慨深い。2000年に病気に倒れてしまい、それ以降のアバドの姿は往年のそれに比べると老けきってしまった感じなのだが、凄い演奏を聴かせてくれているのである。特にルツェルン祝祭管(マーラーチェンバーオーケストラ+ベルリンフィルの名手+その他ソリスト級有名人)とのマーラー「復活」は忘れがたい演奏。

2006年07月25日

●ブッシュ・ド・ノエル(1999)

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久々にフランス映画を観る。フランスらしい不倫めいた恋愛告白物語とでも言おうか。クリスマスまでの数日間、ある音楽家の家族をめぐる恋愛模様を描いている。不倫めいた、というのは、皆が皆離婚していたり、愛人を持っていたりするから。しかし、そこには陰鬱な暗さなどは全くないのである。むしろ、ユーモアを交えて描き出される。あるいはこれがフランス流のエスプリとでも言うのだろうか?おそらくは冬の長い夜に少し強めの蒸留酒などをチビリとのみながら一人で安楽椅子に腰掛けてゆっくりと観たいなあ、という映画。