2004年09月26日
●新国立劇場「ラ・ボエーム」
ボエームは三回目。新国立劇場では昨年の4月に同じ演出を見ています。今回は同じ演出を二度目でみることになります。三回ぐらいみるとさすがにいろいろと見えてくるようになりました。
(参考にカラヤン=パヴァロッティ=フレーニ盤の画像を載せています)
ソプラノのニテスクは低い倍音が豊かに鳴っていて深みのあるいい声です。ギアチェンジの多い指揮にもしっかり反応しています。その真価は演技にも発揮されていました。第1幕の出会いのシーンから仕草や表情にただならないものを感じます。そして第4幕のミミの死の場面においてはまさに鬼気迫る演技。病で弱りきったやつれた表情を作りだし、大きな目だけが目立っている感じです。そして臨終を目を開けたままむかえるとは。下手な女優はここまでできないでしょう。この方をみることができたのは本当に幸運でした。実は昔グラインドボーンでマノン・レスコーで歌った映像がNHKBSで放送されていたのですが、そのときはさしたる印象を持たなかったのですが、実際にみてみると違うものです。
演奏の方ですが、全体にゆっくりとしたなテンポで強めのアコーギグでメリハリをつけようとしているのはわかるのですが、かえって統一感が失われてしまったようにも感じました。ロドルフォ役のヴァレンティと井上道義はコミュニケーションがとれておらず残念。指揮者は総責任者としてアンサンブルをまとめてほしかったなあ、とおもいます。「その冷たい手を」は平行棒の上をふらふらと歩いているような感じで、少しハラハラしました。
ヴァレンティはピッチも安定していましたしルックスにも恵まれています。これからの人なので今後に期待だと思います。マルチェッロのフレデリクソンは、そつなくまとめた感じ。声の質は柔らかかったです。ムゼッタの水嶋は声もよくピッチも安定していましたが、昨年の中嶋彰子に比べると華がなかったような気もします。コッリーネのシャオリャン・リーはよかったですね。切れのある低音がじつによく効いていました。
| 名称(和) | ラ・ボエーム |
|---|---|
| 名称(欧) | La Boheme |
| 幕形式 | 4幕 |
| 作曲年 | 1892-1895 |
| 台本 | H・ミルジェールの小説『ボヘミアンの生活情景』により、G・ジャコーザとL・イリッカ |
| 初演 | 1896 トリノ |
| sq | 配役 | 種類 | 名前 |
|---|---|---|---|
| 1 | 指揮 | - | 井上道義 |
| 2 | 演出 | - | 粟國淳 |
| 3 | 演奏 | - | 東京フィルハーモニー管弦楽団 |
| 4 | ミミ | ソプラノ | アンディーネ・ニテスク |
| 5 | ロドルフォ | テノール | ジェイムズ・ヴァレンティ |
| 6 | マルチェッロ | バリトン | カール=マグヌス・フレデリクソン |
| 7 | ムゼッタ | ソプラノ | 水嶋育 |
| 8 | ショナール | バリトン | 河野克典 |
| 9 | コッリーネ | バス | シャオリャン・リー |
2004年09月25日
●カール=マグヌス・フレドリクソン
Karl-Magnus Frediksson (Baritone) - Short Biography
今日の新国立劇場マルチェッロ。マルチェッロはボエームにおいて重要な役柄。この方も若い。
●ジェイムズ・ヴァレンティ
今日の新国立劇場ロドルフォ。ニュージャージー出身。新鋭。
2004年09月24日
●アニータ・ブルックナー「結婚式の写真」
イギリスの格式あるブルジョワ家庭を切り盛りするソフカは、夫に先立たれてはいるが、4人の子供と使用人に囲まれ過ごしている。フレデリックは派手で好きな遊び人、ミミはおとなしい女の子、ベティは実はおてんばでにして野心を持つ女の子、そしてアルフレッッドは本が大好きな内省的な男の子。時代は回る。ベティは、寄宿学校へ向かう途中にパリで脱そうし、ダンサーの道を目指す。フレデリックは結婚して妻の実家であるホテルの支配人となる。ミミは病弱で家に閉じこもりがちなのだが、使用人ラウトナーの結婚する。アルフレッドはいやいや家業を継ぎ、それなりに成功をするのだが満たされない。
家族の歴史のなかで繰り返される結婚式とその写真。詩的と言うよりはむしろドキュメンタリーのような硬いタッチで淡々と描かれる家族の歴史でには枯れた美しさがある。
2004年09月21日
●ジュゼッペ・ジャコミーニ
1940年9月7日にイタリアはパドヴァ生まれ。ヴェリチェッリにて「蝶々夫人」のピンカートン役でプロデビュー。ミラノ・スカラ座、ハンブルグ、コヴェントガーデン、メトロポリタン、ウィーン国立歌劇場など、欧米のオペラ劇場に出演しています。日本にも藤原歌劇団の招きで何度か来日している模様。
オフィシャル・ウェブサイト
Giuseppe Giacomini
http://www.giuseppegiacomini.com/index.html
ジュゼッペ・ジャコミーニさんは64回目の誕生日を新国立劇場で迎えたとのことで、新国立劇場Webページにてその模様が伝えられています。9月7日のゲネプロにて、カーテンコールリハーサル中、指揮者登場の場面でノヴォラツスキー監督がケーキを持って登場。東京フィルハーモニー交響楽団がHappy Birthdayを奏でて誕生日を祝ったとのこと。これが、本公演中ならばもっと面白かったでしょうに。
Opebaseによると、2005年1月にテルアビブでカニオを歌う予定がある模様。今回は代役ということでしたが、まさに時宜にかなった代役ということで、きわめて幸運でした。
2004年09月18日
●新国立劇場「カヴァレリア・ルスティカーナ」・「道化師」
久々の新国立劇場です。今シーズンの最初のプログラムは「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」です。ヴェリズモオペラの代表格のこの二つのオペラをカップリングで楽しめるとはなかなかいい機会に恵まれたものです。
(映像は参考までに、ドミンゴ阪を2枚載せてみました。どちらもゼフィレッリ監督の映画版)
どちらも、愛憎劇といってもいいでしょう。愛情の世界という者はどうもこうもうまくいかないことが多いものですね。そしてそれをこうしてオペラの世界まで昇華させることができる二人の二人の作曲家は拍手ものでしょう。
残念ながら、マスカーニ(「カヴァレリア・ルスティカーナ」)もレオンカヴァレッロ(「道化師」)もこれ以外の作品をメジャーなかたちで後世に残すことができなかったのですが、後世に残すことのできたこの二つの作品は、残るだけあってさすがにひと味違う作品となっています。
愛憎というものは、あらゆる人の心の深いところに沈んでなかなか浮かび上がってくるものではありません。会社の上司であろうと部下であろうと、あるいは同僚の心の深いところに沈んでいるはずなのですが、実社会では、それはお目にかかることもないわけです。しかし、ちょうど空気の塊が水面へ向かうように、愛憎も浮力をもっていて、その姿をあらわにしようとするわけですが、僕たちは必死に底に沈めておこうとするわけです。そこに、ひずみが生じて、ストレスとなって体をむしばんだりするわけです。
この二つのオペラの登場人物たちは、この愛憎と呼ぶべき感情を奔放に爆発させています。この爆発が、情熱的な音楽と相まって、僕たちの心に生じているひずみに共振を生じさせるわけで、それが感動となって涙腺を弛ませるわけです。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」のサントゥッツァを演じたエリザベッタ・フィロリッロの深い声質は、サントゥッツァのやるせない苦しみを表現するに十分なもの。力強い声量はフルオーケストラのそれに匹敵していました。トゥリッドゥを演じたアッティラ・B・キスも芯のあるしっかりした声質。美しい間奏曲も楽しめました。この曲は聖母マリアをたたえる歌だったんですね。
「道化師」のジュゼッペ・ジャコミーニ(http://www.grandi-tenori.com/tenors/giacomini.php)は最初はどうやらセーブしていたようなのですが、「衣装を着けろ」ですばらしい気合いを見せて、フィナーレでは会場の心臓をわしづかみにしました。実にすばらしかった。僕が新国立劇場に通い始めて2年ほどになりますが、ここまでのカーテンコールは初めてでしたし、それに見合うだけのものだったと思います。キャリアを見てみても確かにすごいものがありますね。圧倒的でした。
| 名称(和) | カヴァレリア・ルスティカーナ |
|---|---|
| 名称(欧) | Cavalleria Rusticana |
| 幕形式 | 1幕 |
| 作曲年 | 1889 |
| 台本 | G・ヴェルガの小説により、G・タルジョーニ=トッツェティとG・メナッシ |
| 初演 | 1890 ローマ |
| sq | 配役 | 種類 | 名前 |
|---|---|---|---|
| 1 | 指揮 | - | 阪哲朗 |
| 2 | 演出 | - | グリシャ・アサガロフ |
| 3 | 演奏 | - | 東京フィルハーモニー交響楽団 |
| 4 | サントゥッツァ | メゾソプラノ | エリザベッタ・フィオリッロ |
| 5 | トゥリッドゥ | テノール | アッティラ・B・キス |
| 6 | ローラ | メゾソプラノ | 坂本朱 |
| 7 | アルフィオ | バリトン | 青戸知 |
| 8 | ルチア | メゾソプラノ | 片桐仁美 |
| 名称(和) | 道化師 |
|---|---|
| 名称(欧) | I pagliacci |
| 幕形式 | プロローグと2幕 |
| 作曲年 | 1890-1892 |
| 台本 | カラブリア地方で起こった実話により作曲者自身 |
| 初演 | 1892 ミラノ |
| sq | 配役 | 種類 | 名前 |
|---|---|---|---|
| 1 | 指揮 | - | 阪哲朗 |
| 2 | 演出 | - | グリシャ・アサガロフ |
| 3 | 演奏 | - | 東京フィルハーモニー交響楽団 |
| 4 | カニオ | テノール | ジュゼッペ・ジャコミーニ |
| 5 | ペッペ | テノール | 吉田浩之 |
| 6 | ネッダ | ソプラノ | ジュリエット・ガルスティアン |
| 7 | シルヴィオ | バリトン | ルドルフ・ローゼン |
| 8 | トニオ | テノール | ゲオルグ・ティッヒ |



