●チェリビダッケ/モーツァルト「レクイエム」
チェリビダッケらしい重くゆっくりとしたテンポでイントロイトゥスが始まる。さすが、と思うのだが、キリエ、ディエスイレイは普通のテンポに戻る。あのゆっくりとしたテンポで続けられたら、合唱部もかなわないだろうなあ、と思っていたのだが、それは杞憂であった。
そもそもチェリビダッケといえば、ゆっくりとしたテンポで意表をつくことが多いのだが、良く聴いてみると、音楽表現に合わせたテンポ取りをきちんとしているのであって、テンポの遅さが気になるようなことはあまりない。必然的にテンポをコントロールしているのが良くわかるのである。それが証拠に、チェリビダッケのモーツァルト交響曲第40番などは軽快なテンポ取りで、実にはつらつとした表情を見せてくれるのである。
そんな感じで聞き進んでいくと、僕のお気に入りのオッフェルトリウムに差し掛かるのだが、ここはいつ聴いてもいいなあ、と思う。チェリビダッケもやはりグルーヴのある演奏で楽しませてくれる(そもそも楽しんではならない音楽なのかもしれないのだが…)。
総じて、チェリビダッケらしい良い演奏。