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2005年08月11日

●パット・メセニー「シークレット・ストーリー」

●ネットバンキング決済・コンビニ後払いも可能!シークレット・ストーリー・ライヴ

ある冬の寒い日、三軒茶屋の哲学科の先輩の家に遊びに行った。四畳半ぐらいの小さな部屋で、本棚にはびっしり哲学書はまっていた。新聞がたくさん重ねられていて、なぜかと尋ねると、文化評論を読むためにとってあるのだそうだ、といった。案の定その先輩は後年大学院へと進んでいった。

その先輩の家で音楽を聴かせてもらった。パット・メセニーのシークレット・ストーリーだった。まだ大学一年だった僕はパット・メセニーまであまり手が回っていなくて、その先輩の家で聴いたときが初めてのシークレット・ストーリー体験だったのである。この曲を知らなかった自分の不勉強を恥じた。もっと早く聴いておくべきだった、と。絶叫するシンセ・ギターの音や、オーケストレーションの完成度。クリアなアルバム全体の雰囲気。

その年は、東京はよく大雪に見舞われたのだった。その年の成人の日もやはり大雪で、僕はシークレット・ストーリーを聴きながら、高田馬場の下宿から雑司が谷方面へとさまよい歩きはじめた。コートも着ないで、上着にマフラーだけを巻いた姿で。雑司が谷墓地にも行ったし、鬼子母神方面にも歩いた。雪の明治通り沿いを都電がゆっくりと走るのも見た。雑司が谷にすむ友人の家を探し当てたりもした。あんなに楽しい散歩を、あれ以来したことがない。山手線の中にありながらも、落ち着いた風情を醸し出す町並みが雪に覆われた姿は、そうそう見られるものではない。その日だけは不思議な気分で雪と寒さを楽しんだ。このアルバムを聴くと、雪の東京雑司が谷界隈をおもいだすのは、こういうわけなのだった。

曲自体もジャズとかフュージョンとか、そういうジャンル分けを拒むダイナミックな構成で、初めて聴いたときにこんなのもありなんだ、と驚いたものだ。これがフュージョンといわれるなら、フュージョンが好きだ、とおおっぴらに言える、と思った。結構ショックが大きかった。ちょうどそのころ、精神的にもまいっっていた時期で、学科やサークルの友達との交流を断絶して、この曲なんかをテープがすり減るぐらいまでききながら下宿の部屋の万年布団の中でいろいろ考えていたものだった。

いま、聞き直しても、僕にとっては全然色あせていない。時々聴いては、あのころのことを思い出して、懐かしんで、悔いって、という感じである。

※それにしても、いまどきはCDよりDVDのほうがやすいとは、びっくりである

雑司が谷界隈の地図はこちら(Google Mapsです)

http://maps.google.com/maps?q=%E9%9B%91%E5%8F%B8%E3%81%8C%E8%B0%B7&ll=35.715124,139.719830&spn=0.014135,0.024176&hl=en

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