●小澤征爾音楽塾V 「ラ・ボエーム」
小澤征爾音楽塾V 「ラ・ボエーム」
浜松アクトシティ大ホール
ミミ:ノラ・アンセルム
ロドルフォ:ロベルト・サッカ
マルチェッロ:マリウス・キーチェン
ムゼッタ:アンナ・ネトレプコ
ショナール:ネイサン・バーグ
コルリーネ:ハオ・ジャン・ティアン
ベノワ、アルチンドロ:ポール・ブリシュカ
パルピニョール:鳴海優一
やはりプッチーニはすごい。何度聞いても第1幕の「その冷たい手を」、「私の名はミミ」のシーンで感動してしまう。
全体にゆっくりとしたテンポどりで、歌手は大変だったのではないだろうか。特に第二幕ムゼッタのワルツは、ゆったりとしたテンポに、かえってアンサンブルの躍動感が失われてしまった感がある。ただ、第二幕の終わるところ、鼓笛隊がでてきたあたりのスピード感は実によかったと思う。(しかも鼓笛隊は子供じゃなかっただろうか?そして本当に演奏していたのではないだろうか?子供だとしたら、本当にうまい。そしてあのスピード感はなかなかのものだと思う。)
第三幕の四重唱は絶品。前評判抜群のネトレコプもここにきて調子を取り戻した感がある。暗い声と評されていたが、暗さとともに柔らかさも持つ。演技もうまいしなにより美しい姿。ムゼッタという役柄からそう見えたという面もあるだろうが、少し妖しい魅力をも感じさせる。ルルやサロメを歌うと似合うのだろうなあ、と思う。特にルル。コルリーネのハオ・ジャン・ティアンもとてもよかった。一幕からツヤのあるいい声を聴かせてくれていたが、四幕のあのアリアもちゃんと聴かせてくれた。ロドルフォのロベルト・サッカやマルチェロのマリウス・キーチェンもよかった。特にキーチェンの声質は気に入った。ミミのノラ・アンセルムはパワーのあるソプラノ。可憐なるミミ、という感じではなかったけれど…。どちらかといえば、ワーグナー歌いなのではないか、という気もする。
そもそもの理念として小澤征爾音楽塾とはオケメンバーの育成をはかるための教育プロジェクトであるわけで、オケメンバーは全員若手。そういうことで、浜松アクトシティ大ホールの後方27列に座ったと言うこともあり、オケの音が聞き取りにくい。アンサンブルは整っていて、弦楽など美しいと思ったのだが、爆発的な躍動感のようなものはあまり感じられなかった(ただ、一番最後の金管合奏はよかった)。
演出もなかなか。舞台中央には、まるで舞台を左右に分けるように長くて細い煙突の管が聳えていて、この煙突の存在が舞台を引き締めている。これがなかなか効果的。一幕と四幕のロドルフォたちの部屋は、この煙突を中心にしたごく狭い空間で表現されていて、中央での演技が中心となってしまうきらいがあった。それでも4幕では舞台全面に黄色い花がちりばめられそのうつくしさはなかなか。まるでミミへ手向けた花のようだ。一幕から二幕へ移る場面はすばらしかった。無人の部屋が一瞬にしてモミュスに変わったのだから。煙突を伝って舞台上から人が降りてくるし。客席からも少しく歓声が上がったほど。
総じて全体に少々疲れ気味であった。四月二九日の横浜から三日おきに今日まで四公演。滋賀、名古屋、浜松ときて、九日は宇都宮で演奏会形式の上演、そして十一日の上野が最終日だというから。やはり、初日を見ておいた方がよかったかもしれないかな、とも思った。若手オケメンバーの晴れ舞台だから、全国各地を練り歩く必要もあるだろうが、一カ所で何度か公演させてあげた方がいいのかもしれない。
(もっとも、東京から浜松へ移動した我々が疲れていた、という気もするが)