●神に選ばれし無敵の男(2001)
1932年というから、ナチスが政権を奪取する直前の時代のこと。ポーランドのユダヤ人で怪力の持ち主ジシェと、千里眼師で自称デンマーク貴族のユダヤ人ハネッセンの物語。
とは言っても、ストーリー的には少々拡散しているのだが、特筆するべきは映像の美しさと音楽だ。ジシェの夢に登場する赤いカニの群れの映像。岩場の海岸一面に広がる赤いカニ。線路に群がるカニと、遠くから近づいてくるディーゼル機関車。そして、マーラー交響曲第5番第4楽章アダージェトを彷彿とさせる弦楽合奏。これはほとんどヴィスコンティの世界ではないか?ヘルツォークは赤いカニのシーンを描きたいからこの映画を作ったのではないかとも思えてしまう。そしてそれほどまでに美しい映像。もっともこの「美しい」という言葉は、ふつうの「美しい」という言葉とは軌を一にしない。驚きと一緒であったり、自分とは異質のものを感じると事の「美しさ」であり、もしかしたらこういう映像のことを「崇高」と言うのかもしれない。
監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク
音楽:ハンス・ジマー、クラウス・バデルト
撮影:ペーター・ツァイトリンガー
出演:ティム・ロス、ヨウコ・アホラ、アンナ・ゴラーリ、マックス・ラーベ、ヤコブ・ウェイン、ウド・キアー他
(2001年/ドイツ・イギリス合作映画/130分/配給:東北新社)
