
辻邦生先生の作品で、1992年に筑摩書房より出版される。この作品は「天使たちの鼓笛隊」や「ユリアの魔法の都」といった、ファンタジックな大人のための童話の部類に属する作品。作品に通底するテーマは「理想とその崩壊」とでもいえるもので、「ある生涯の七つの場所」、「光の大地」、「ユリアの魔法の都」といった作品にも取り上げられたテーマである。一見すると理想と思えることが、実は劇薬なのであって、人間的なものではないことを示している。現実や人間を、理性だけではなく感情的な面からも押さえていかなければならないわけで、安易な理想主義は逆効果なのだ。これは、20世紀を巡るおおきな問題とも根を同じくするものだ。