●ミュンヘン空港への到着
(11月18日のこと)
離着陸時のルフトハンザの機内灯は必ず落とされる。これはほかの航空会社では体験できないことだ。そして、今回のミュンヘン空港着陸時も同じだ。薄暗い機内は静まり返っていて、エンジン音でさえかき消されている。ふらふらとした緩やかな機体の動揺が、激しい同様に変わり、エンジンが甲高く逆噴射の開始を告げて、ようやく着陸したことが分かる。滑走路の端で減速を終了したエアバスが、ゆっくりとタキシングをはじめると、客室乗務員も席を離れ、ゲートへのセッティングの準備を始める。このとき、乗務員は上着を着けた正装となっている。隣の日本人女性は長距離フライトが初めてとのこと。真っ青な顔をしていた。英語もドイツ語もよく分からない彼女は、機内サービスでドリンクを選ぶにも苦労をしていたので少々助けてあげたのだが、別れ際に、お疲れさま、まだまだありますからお気をつけて、と声を掛ける。彼女達はスペインへと巡礼に向かうのだそうだ。今夜はミュンヘンでルフトハンザ機を乗り継ぎ、バルセロナへと向かうのだ。
ミュンヘン空港は鉄骨が有機的にデザインされたロジカルな印象の建物で、とても静かだ。無駄なBGMや案内放送はない。電動荷物車が通るときに低いモータのうなり声が聞こえるぐらい。入国管理ゲートでも無事に通過。いつもながら入国管理官は無機質な表情で、ガムを噛みながらパスポートにスタンプを押す。彼らがスタンプを押すページはいつも適当だ。前のページから詰めて押してくれれば良いのに。僕の前に並ぶ日本人男性は、どうやら髪の毛を短く刈ってしまったようで、パスポートの写真とは似ても似つかぬ顔かたちになってしまっていたらしく、管理官が、本当にお前なのか、と問いただしている。最後は肩をすくめて、ガチャンとスタンプを押したのだが。