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2003年10月19日

●新国立劇場「フィガロの結婚」

毎回毎回、なにかあって行けなくなるんじゃないか、と思っているのだが、無事に新国立劇場「フィガロの結婚」にいくことが出来た。

総じて、きわめて良い演奏だったし演出で、オペラ歴は1年にも満たないところではあるが、これまで見たうちで、もっとも満足度が高い演奏のひとつだった。

演出
会場に入るとはじめから立方体のセットが見えている。序曲の途中からダンボール箱が搬入され(そこにはLondon, vienna, Sevilie, トウキョウと書かれている)、それが小道具として、たとえばテーブルであったり衣装箱であったり、といった具合に使用され続ける。セットは全体に白でまとめられているので、照明の当て方や色によって表情ががらりと変わってくる。壁に映るキャストの影の使い方もきわめて面白かった。衣装も統一感があって、良い感じだ。立方体のセットは途中から徐々に崩れて行く。
演奏
ケルビーノ役のエレーナ・ツィトコーワがとても印象的。声の柔らかさ、ふくよかさ、ボリューム。2つのアリアは感動的。拍手の大きさが違った。とても小柄なのに、よくもあんなに良い声が出るものだ。演技も結構上手くて、男の子っぽさがよく出ていたと思う。この歌を聴いてしまうと、その他の歌手が少々見劣りしてしまうような感じもあるのだが、クリストファー・ロビンソン、ジャニス・ワトソン、中嶋彰子、ペテリス・ユグリーティス、エレナ・ツィトコーワの5人は結構高いレベルで歌っていたと思うし、バルバリーナ役の中村恵里も良い声だったと思う。

全体に本当に安心して聴けたし、それ以上の感動も得ることができた。いつもの新国は声の小さい歌手がいて、ボリュームコントロールをまわしたくなるときがあるのだけれど、そういうことは今回はあまりなかった気がするのだ。

特に第3幕の伯爵、伯爵夫人、スザンナの三重唱「スザンナ、すぐ出ておいで」のドライブ感は格別。ここは実に感動した。

しかし、こうして感動したとしても、それがどういう風に生き方に関与してくるのだろうか、と、京王新線に乗ろうとした瞬間に思ってしまった。オペラに行くということはひとつの娯楽なのだが、一応はオペラは芸術であるとされている。オペラに魔力がある、という新国オペラ芸術監督のノヴォラツスキーの言葉もあるが、それが実際にどういった価値を持っているのか、ということを常に考えなければならないだろう。単なる娯楽に終わらせてしまうにはもったいないだろうから。

次は11月9日のToscaだ。

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